いまさら聞けない”利益”の種類

簿記の勉強でもしていない限り”利益”の種類について学ぶ機会はあまり多くないかも知れませんが、業績について学び始めると様々な呼び名の利益に触れることになります。その呼び名ごとに正しい概念を知っておかないと、誤った学びをしてしまうことにもなりかねません。改めて”利益”の種類を確認してみましょう。

目次

粗利(あらり)とは

粗利とは売上総利益を簡素に表現したものです。”うりあげそうりえき”と発音するのは長くて煩わしいので粗利という呼び方が多く使われるのだと思います。粗利(売上総利益)とはどの様な利益かというと、売上高から売上原価を差し引いたものです。計算式では、売上高-売上原価=粗利(売上総利益)となります。売上総利益は決算書などの正式な(公的な)場面で使われる表現です。

少し気になるのは売上原価とは何か?という事ではないでしょうか?仕入原価と何が違うの?と聞かれることも多いです。この違いは、仕入原価は仕入れたものの原価であるのに対し、売上原価は売れたものの原価という事なので、その単価としてはいずれも同じですが、仕入れた(購入した)数と売れた数の違いがあります。従って、仮に仕入れた数と売れた数が同じならば、仕入原価=売上原価となります。

営業利益とは

営業利益とは、粗利(売上総利益)から販売費および一般管理費を差し引いた利益を指します。営業利益については荒利のように簡素化した呼び名は私の知る限りありません。営業利益とは本業から生ずる利益を示します。なぜ”本業”という表現をするかというと、収入(利益)は本業によるものと副業によるものを分けているからです。利益の額は業績を図る重要な数字ですから、これが本業によるものなのか、そうではないのかは分けて捉える方が有用です。

本業と副業はどう分けるのかというと、会社の定款の営業目的に記載されている事業から生ずる収入か否かによります。例えば、食品の小売りのみを事業の目的としている会社が、所有する有休地を他者に賃貸しているとき、この賃貸収入は副業による収入に分類されます。この副業による収入の正式名称は”営業外収入”です。副業による収入及びこれに起因する費用は営業利益の計算には含めません。

経常利益とは

営業利益に営業外収入と営業外費用を加減した結果の利益を経常利益と言います。経常は計上と発音が同じなので、これを区別するために経常利益を”けいつねりえき”と呼ぶこともあります。営業外収入とは、前述したように本業以外から生ずる収入で、営業外費用とは営業外収入に起因する費用や本業の営業活動以外の活動によって生ずる費用になります。いずれも経常的に生ずる費用・収益を指しますので、突発的に生じる費用・収益は特別損益として経常利益の計算からは除外します。

税引前当期純利益とは

省略して税引前利益ということが多いと思います。税引前当期純利益とは、経常利益に突発的で経常的でない費用と収入を加減した利益で、法人税等の利益に課税される税金を差し引く前のものです。税金以外の要素での最終的な利益という事です。

限界利益とは

簿記の学習をしても限界利益という言葉は出て来ませんが、損益分岐点分析など経営分析では限界利益という言葉が使われます。限界利益は、売上高と変動費の差額ですから、計算式で表すと 売上高-変動費=限界利益 となります。変動費とは、売上が1単位増えたときに増加する費用のことを言いますから、小売業でいえば仕入商品の原価がこれにあたります。商品が一つ売れるとその原価が一つ分発生します。この原価が変動費です。変動費に対する費用の概念に固定費というものがありますが、これは売上高が増加しても変化しない性質の費用で、固定的に発生するので固定費と呼ばれます。代表的なものには人件費があります。

限界利益とは、売上が1単位増えると増える利益を言います。小売業の場合は売上総利益(粗利)とほぼ同じになると思いますが、製造業や建設業のような業種では、製造原価中の人件費や製造経費の一部は固定費になるので、売上総利益とは大きく異なります。

まとめ

会計では利益の計算過程を分解して収益力などの情報を分かり易く表現する工夫がされているため、複数の異なる利益の概念が存在します。経営分析などをしようと思うと必ず登場してきますから、これを正しく理解し経営に役立てて頂きたいと思います。

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