キャッシュフローの理解に必要な減価償却費とは?

減価償却費の性格
減価償却費は会計の専門用語ですが、水道光熱費や交際費などと違って、どのような費用なのかが少し分かりにくいですね。
減価償却費は、各事業年度の損益計算の際に、1年を超えて使用される設備等を各事業年度に費用として配分したものを指します。例えば事業に使用する営業車を200万円で購入し、これを4年間使用すると仮定した場合、その使用期間に均等に費用を配分しようとすれば年に50万円となります。この年50万円の費用が減価償却費です。減価償却費そのものは収益から差し引かれはするものの、資金の支出は伴わないため利益と資金に差を生む要因となるものです。この費用配分を図示すれば以下のようになります。

上記の図のように、1年目の事業年度が終了した時点で200万円で購入した車両の資産計上額は減価償却費分だけ減少して帳簿価額は150万円に減少します。同じように2年目の終了時点では100万円になり、やがては0円になります。
減価償却費は、事業のために使用した資産を費用化したものです。実務では減価償却額の計算にあたって適用するルールには様々なものがあるので前述のように単純では有りませんが、本質的な性格は変わりません。
損益計算書から資金力を見る
キャッシュフロー計算書は企業の資金の流れを、資金が増える要因と減る要因に分けて、営業活動、投資活動、財務活動のそれぞれに分類したものです。資金の流れを正確に表すものでは有りますが、作成は少々面倒ですからもっと簡単に資金力を知る方法を知っておくと経営管理の上で便利です。
それは損益計算書を用意するだけで事足ります。損益計算書は1年分のものである必要はありません。知りたい月数のものがあれば結構です。ただし、法人税は1年未満の損益計算書には適正額が計上されていないので注意が必要です。この点については後述します。
資金力の計算自体はごく簡単で、損益計算書の当期純利益(税引き後利益)にその年度の減価償却額を足すだけです。減価償却費は、販売費および一般管理費と製造原価報告書を作成している場合はこの中にも計上されていますので、その両方を足します。
例えば、当期純利益が100万円で、販売費および一般管理費の中に減価償却費が50万円、製造原価報告書に80万円の減価償却が計上されている場合の資金力は、100万円+50万円+80万円=230万円となります。タイムラグはあるものの、その年度の経営活動によって生み出される資金は230万円ということになります。
一方費用に計上されない支出はこれを源泉にして支払われます。その代表的なものが借入金の元金です。費用に計上されない支出が借入金の返済だけであれば、年間の返済額が230万円以内なら資金を減らすことは有りません。
逆に230万円を超える返済額があるとすれば、確実に超えた分だけ資金を減らすことになりますから、その不足の程度に応じて何らかの対策が必要となります。
1年未満の損益計算書を使用する場合、法人税等についてはどう考えれば良いのか?という点ですが、これば概算の法人税等を考慮すれば事足ります。その計算にあたっては、正確に法人税等の額を算出する必要はない(というか不可能なので)ので、概算で十分だと思われます。法人税等には国や地方自治体に支払う分が混在していて、それぞれ計算方法が違うので計算は非常に複雑ですから、会計事務所に依頼するなどして実効税率を知っておけば良いでしょう。利益の額や企業の税務的な状況で変わりますが、概ね30%前後くらいだと思います。
法人税等の率(実効税率)を30%とした場合、税引き後利益は税引き前当期利益×(1ー30%)で求めることが出来ますので、これに減価償却費の額を加算すれば、基本的な資金力を計算することが出来ます。
まとめ
経営管理をする上で非常に重要なことの一つは資金管理です。自社が生み出す資金がプラスなのかマイナスなのか、それはどの程度なのか、今後それは拡大に向かうのか、縮小に向かうのかなど、経営者としてその動きの現実とトレンドは掴んでおきたいところです。
そのためには簡単に現実を把握する方法として、前述した簡易キャッシュフローの計算方法を活用して頂きたいと思います。